「ホルンってどんな楽器?」と調べてみると
- 世界一難しい金管楽器としてギネスに登録されている
- 音域が広い
- 倍音が多く、音を外しやすい
などの説明をよく目にすると思います
でもホルン吹きにしかわからないことってたくさんあるんですよね
この記事では「ホルン奏者にとってはあたりまえ」のことだけど、ホルン奏者以外はあまり知らない「ホルンのちょっと大変なこと」を紹介しています
「へぇ~ホルンってそんなことしてるんだ~」くらいの軽い気持ちでご覧くださいね
ホルン奏者は2台の楽器を操っている!?
ホルン奏者のほとんどが「フルダブル」という楽器をつかっています
実はこの「フルダブル」のホルンは、「B管」と「F管」の2台の楽器が合体してできているんです!
ホルン奏者は主に「B管」をつかっているのですが、「F管」もつかっています
「B管」と「F管」の切り替えは、4番レバー(親指のレバー)をつかいます
押しB(ベー)と、押しF(エフ)がある
きっとホルン奏者以外は知らないしつかわないであろう「押しB(ベー)」「押しF(エフ)」という言葉があります
これは4番レバー(親指のレバー)を押すと、楽器がどちらの調性になるか、ということなんです
言葉のとおり
- 「押しB」は4番レバーを押すと「B管」、はなすと「F管」
- 「押しF」は4番レバーを押すと「F管」、はなすと「B管」
になります
演奏では主に「B管」をつかいますので、「押しB」の奏者は4番レバーをずっと押したまま1番から3番のレバーを操作して演奏しています
「押しB」にするか「押しF」にするかはそれぞれの好みになり、どちらが正解というものではありません
演奏面でも特になにかあるわけでもなく
「○○ちゃんは押しB派なんだ~!親指いたくならない?」「今更押しFに変えるのもな~」
みたいな会話にでてくるくらいのものです
わたしは学生時代につかっていた学校の楽器が「押しB」でしたので、長い期間「押しB」で吹いていました
自分の楽器をもつことになり「押しF」に変更しましたが、特に苦労することなくスムーズに「押しF」にチェンジできました
しかし慣れるまでには時間がかかる人もいるようです
フレーズの中でもF管とB管をつかいこなしている
ホルン奏者は「B管」を主につかっていますが、「F管」もつかいます
どのようなときに「F管」をつかうかというと、例えば ソ(Cツェー)や ファ♯(Hハー)の音は「B管」だとピッチ(音程)が合いにくいので「F管」を主につかいます
このような楽譜があれば、ほとんどのホルン奏者は ソ(Cツェー)と ファ♯(Hハー)の音は「F管」をつかって吹きます
また、早いパッセージで(ホルンにはめったにないのですが・・・)「B管」よりも「F管」のほうが指回しがやりやすい場合は「F管」をつかうことがあります
このようにホルン奏者は「F管」と「B管」の2種類の運指をマスターしてつかいこなしています
また「ゲシュトップ」というホルン独自の奏法のときは、フルダブルの楽器の場合「F管の半音下の運指」で吹きます
ややこしいですよね~!
2021年に放送された朝ドラ「おかえりモネ」で、芸人の石井正則さんが元ホルン奏者という役で出演されていました
石井さんがドラマの中でロンドンデリーの歌(ダニーボーイ)を演奏するシーンがあったのですが、運指も合っていて、しかもCの音がちゃんとF管の運指になっていたんです!
石井さんの役は「押しF」だったのですが、ネット上のホルン吹きのコミュニティでは「石井さん、押しFだった~‼」とプチ盛り上がりをしていました
ホルンは抜き差し管が多くて大変‼
ホルンは抜き差し管がとっても多いんです
フルダブルではなんと8か所~9か所もあります
なにが大変かというと・・・まずはお手入れです
定期的にグリスをふき取ってぬりなおしますが、とっても時間がかかります
そしてなによりも大変なのが「つば抜き」です!
演奏しているとぷくぷくとどっかでつばが溜まっている音がするのですが、楽器をくるくるまわしてみてもでてこないことがあるんです・・・(ウォーターキーがついているホルンもあります)
そこで管を順番に抜いていって、つばをピッピッとしていくわけです
そうしていると合奏中は演奏開始に間に合わないこともしばしば・・・
そしてコンサートの時のホルン奏者は、曲間に必死につば抜きをしています
吹奏楽のコンサートでは曲間に司会がはいることが多いのですが、ホルン奏者はつば抜きに必死で聞いている余裕は全然ありません
また、長い曲の静かな場面でどうしてもつば抜きをしないといけない時は、管をあてて音をたててしまわないように全神経を集中させてそぉ~っと動いています
つば抜きに気をつかいすぎて、お休みの小節を数えまちがえることもあるとかないとか・・・
ホルンの楽譜はわかりづらい⁉
ホルンの楽譜は「1stと2nd」 「3rdと4th」 が一緒になっていることがよくあります
その場合、同じ音を吹くこともありますが、ホルンはハーモニー楽器ですので違う音を吹くことももちろんあります
2パートが一緒になっている楽譜はこのように書かれていて、1stが上の音、2nd が下の音(3rdが上の音、4thが下の音)を吹きます
このような楽譜だと2パートとも同じ動きをしているのでわかりやすいですね
しかし、このような楽譜もよくあります
上と下のパートが全然違う動きをしています
なれていないと本当にわかりにくいのですが(と、ほかの楽器のかたからよく言われます)ホルン吹きにとってはよくある楽譜なので余裕で吹けてしまいます
オーケストラのホルン奏者は楽譜を移調しながら吹いている‼
吹奏楽のホルンの楽譜は、ほとんどがinFでかかれています(たまにinE♭もありますが・・・)
しかしオーケストラのホルンの楽譜は、inC(ツェー)inⅮ♭(デス)inG(ゲー)などなど・・・いろんな調性でかかれているんです
これはホルンにはまだバルブがないナチュラルホルンの時代に作られた曲で・・・という楽器の歴史の話になりますので、ここでは割愛しますね
ホルンの楽譜は、曲や楽章ごとに調性が変わるので(フレーズごとに変わる曲もあります)練習を始めたての曲は頭が混乱してしまうことがしょっちゅうあります
まとめ
ホルン奏者は2台の楽器をつかいこなしていたり、つば抜きが大変だったり、楽譜がわかりづらかったり・・・とちょっと大変なこともありますし、オーケストラでは移調しないといけない・・・というとっても大変なこともありますが、魅力いっぱいの素晴らしい楽器を演奏しています
わたしはこんな大変なことも含めてホルンという楽器が大好きです!
ホルンのことをあまり知らないかたにも興味をもつきっかけになってもらえたらうれしいです